新刊『Ene ku=an iアイヌ、100人のいまⅡ』の出版
フォトグラファーの宇井眞紀子さんが、アイヌ民族の現代の姿を映し出した新たな写真集『Ene ku=an iアイヌ、100人のいまⅡ』が、10月1日に東京の皓星社からリリースされました。本書は、アイヌの皆さん100人のポートレートを通じて、その文化や日常を切り取ったもので、特にアイヌの人々との共同制作を重視した作品となっています。
宇井さんは1992年からアイヌ民族の取材に取り組んでおり、その活動は33年以上にわたります。この間、日本全国のアイヌの方々と出会い、彼らの声を記録し続けています。自身のプロジェクトの一環として始まったこの写真集は、アイヌの方々が自らの文化を表現する場として機能しています。
クラウドファンディングで実現
新しい写真集の出版に向けて、宇井さんは4月からクラウドファンディングを開始。多くの支援者の協力によって、今回の写真集が完成に至りました。本書は一冊一冊がアイヌの方々の声と姿を反映し、それぞれの独自性と背景を誇ります。
アイヌの文化と歴史を体感
アイヌとは、日本の先住民族であり、北海道を中心にサハリンや千島列島に住んでいた方々です。彼らは、長い歴史の中で多くの苦難を経験し、文化を守り続けてきました。宇井さんは、アイヌのカムイノミの儀式や歌、踊りの瞬間を捉えるだけでなく、彼らの生活のあり様を写真に残しています。日常的なシーンや伝統的な技術を持つ人々を撮影することで、アイヌ文化の深さや美しさを再認識させてくれます。
読者の気持ちに響くポートレート
このプロジェクトでは、アイヌの皆さん自身が撮影場所や衣装を決めるというユニークなスタイルを採用しています。これにより、被写体となるアイヌの方々が自分らしさを持って表現できるのです。同時に、アイヌの方々の「声」を集め、その言葉も写真集に掲載しています。「Ene ku=an i」というタイトルは「このように私がいること」という意味を持ち、参加者からの多彩な表現が詰まっています。この表現が、読者にとっても新たな視点を提供することを目指しています。
写真展の開催
完成した写真集を祝うため、12月4日から12月15日まで『Ene ku=an iアイヌ、100人のいまⅡ』の刊行記念写真展がOM SYSTEM GALLERYで開催されます。この機会に、実際の作品を通じてアイヌの文化と宇井さんの思いを体感することができる貴重なチャンスです。
宇井眞紀子さんの経歴
宇井さんは、武蔵野美術大学及び日本写真芸術専門学校を卒業。写真家の樋口健二氏に師事し、アイヌ民族の取材を本格的に行ってきました。これまでに多くの受賞歴を持ち、公共の場での展示も行いながら、アイヌ文化の発信に努めています。
まとめ
アイヌの今を知りたい、彼らの文化に触れたいという方にとって、今回の写真集と展示会は絶好の機会です。宇井眞紀子さんが30年以上にわたり築いてきた信頼関係と撮影の経験が詰まった作品を通して、「アイヌのいま」をぜひ感じ取ってください。