消えかけた白糠町のソウルフード「鳥じん」を次世代へ継承する物語
北海道白糠町のソウルフードとして半世紀以上も親しまれてきた「鳥じん」が、2026年4月に有限会社とみやストアから白糠印刷株式会社へと承継されることが决定しました。この商品は、地元の焼肉イベントには欠かせない味付け肉であり、ふるさと納税の返礼品としても人気です。数多くの町民にとって、「鳥じん」は家族や友人との思い出を彩る存在です。
受け継がれた味
白糠町で育った方々にとって、運動会や夏の家族の集いで味わった焼肉の香りが「鳥じん」と結びついています。しかし、製造元の「とみやストア」が廃業する危機に瀕しており、町の味を次の世代へつなげる人が現れました。白糠印刷株式会社の社長、佐々木啓行氏がその人物でした。
印刷業からの異業種承継は、全く未知の領域への挑戦でしたが、きっとこの味を守りたいという強い思いが彼を突き動かしました。実は、吉松俊幸氏、元とみやストア社長には、鳥じんの味を引き継ぐ特別な思いもありました。彼はこの味も自ら受け継いでおり、血縁関係はなくとも、商売を通じて共に歩んできた仲間です。
地元の記憶と文化
かつて白糠町には多くの個人商店が立ち並び、町民は独自の味付け肉を楽しんでいました。地域の花火大会や祭りでは、肉料理が大人気で、町を象徴する食文化の一部ともいえる存在です。そんな中、「とみやストア」が製造・販売していた「鳥じん」もまた、町民からの愛が注がれていました。
吉松氏は、2019年に自らの商売のあり方に転機を迎え、65歳を区切りとして次の世代にバトンを渡すことを決めていました。それを心に秘め、彼は鳥じんの製造を特化する方針をたてました。しかし、佐々木社長が指摘したように、すでにこの事業は消滅の危機にあるのです。
異業種の挑戦
白糠印刷は、町でカレンダーやポスターの制作を行う企業であり、祖父から受け継いだ印刷の技術を35年間続けてきました。その中で、佐々木社長はふるさと納税の中間事業者として地元産業と寄付者との橋渡しの役割も担ってきました。彼の経歴は、地元の連携を通して日本全国に自らの商品を届ける取り組みを実現させました。
このような経験を経て、佐々木社長は「鳥じん」の存在意義を深く理解していました。彼は吉松社長に何度も何度も確認し、ぜひこの味を守っていきたいと願う気持ちを表明しました。こうして、異業種の企業が鳥じんを引き継ぐこととなりました。
新たな道のりの始まり
佐々木社長が覚悟を決めてからは、工場の建設や各種申請、機材の準備に追われる日々が続きました。2026年春からの新しい製造体制を整えるべく、彼とその妻、幸希さんは全力で取り組んでいます。コンセプトは「味を次の世代へつなぐ」ということ。製造管理責任者として、幸希さんが重要な役割を果たしています。
佐々木社長は「鳥じん」の命である秘伝のタレも引き継ぎ、それを守り育てていくことの重要性を痛感しています。「私たちが次の世代にこの味をしっかりと伝える!」という決意が日々の仕事を支えています。
未来へ繋がる希望
「鳥じん」は道の駅しらぬか恋問館や地元のスーパーマーケット、さらにはふるさと納税として全国に届けられています。吉松氏は、商売にとって「喜びは儲けただけではなく、お客さんに喜ばれることだ」と語ります。一方で、佐々木社長は「鳥じんは町の想い出と深く結びついている」と強調し、未来の世代にこの味を受け継いでいく決意を新たにしました。
白糠町の魅力は、風土と人々の温かい想いによって支えられています。これからも、このソウルフードを育み、守り続けていく人々の取組みが続くことを期待せざるを得ません。未来の町の姿を想像するたび、鳥じんの味もまた、連綿と続いていくことでしょう。