廃棄血液を再利用した新技術で再生医療が進展中の北海道の研究

北海道の再生医療に新たな展開

北海道大学大学院医学研究院の藤村幹教授を中心とした研究チーム、株式会社RAINBOWおよび日本赤十字社北海道ブロック血液センターによる共同研究が、廃棄される定常的な白血球除去フィルターから有効な血小板と血漿をリサイクルし、ヒト血小板溶解物（f-hPL）の製造に成功した。この成果は、再生医療と細胞治療の発展に向けて大きな意味を持つ。

研究の背景と課題

再生医療や細胞治療の実用化には、間葉系幹細胞（MSC）の大量培養が不可欠である。これまでの培養方法ではウシ胎児血清（FBS）が一般的に使用されていたが、動物由来の制約や倫理的問題、感染症リスクといった課題が浮き彫りになっていた。f-hPLはこれらの課題に対する解決策として注目されていたが、ヒト由来の原料を確保する難しさからその普及は難しい状況であった。

研究手法の革新

研究チームは、血液製剤の製造で利用される白血球除去フィルターに着目し、フィルター内に残存する血小板と血漿を回収し再加工する方法を確立した。この手法によって、一つのフィルターから3.5×1010個もの血小板を回収できることが判明し、平均回収率は37.1%に達した。また、最適化されたタンパク濃度27mg/mLで作製されたf-hPLは市販のFBSの4倍のMSC増殖能力を示し、商用hPLと同等以上の性能を持つことも実証された。

成果と期待される未来

この研究成果は、持続可能な再生医療の資源確保に寄与するとともに、細胞治療の実用化を加速させる可能性を秘めている。特に、血小板の安定供給が課題であったhPL製剤に対し、実用的な解決策を提示することとなった。また、再生可能資源としての医療廃棄物の活用は、国連の持続可能な開発目標（SDGs）にも合致する先進的な取り組みである。今後は、GMP（適正製造記録）を基にした製造プロセス開発や様々な臨床研究の展開に向けて、学術機関や企業と連携を強化していく予定だ。

研究の公表と今後の展望

本研究成果は、2025年4月23日に国際誌『Stem Cell Research & Therapy』に掲載される予定だ。これにより、再生医療分野の研究成果が広まり、さらに多くの医療現場での応用が期待される。この技術がもたらす高品質かつ効率的な細胞製品の製造は、再生医療の普及とその産業化に貢献する新たなプラットフォームとなることが期待されている。

このように、北海道から生まれた革新的な再生医療の進展は、今後の医療業界に大きな影響を与えることが予想される。これからも、注目すべき研究としてさらなる支援と進展が期待される。