栗山町で開催されたケアラー支援講演会の報告とその意義

栗山町で開催されたケアラー支援講演会の報告

2025年9月30日、栗山町のくりやまカルチャープラザ「Ｅｋｉ」にて、ケアラー支援講演会が開催されました。約150名が出席したこの講演会のテーマは「お父さん、なぜ線路に入ったのですか？～認知症介護で苦悩する母の思いと家族の心境～」です。この講演は、認知症が引き起こす様々な問題を浮き彫りにし、どのように介護に取り組むべきか考える機会となりました。

講演を行ったのは、高井隆一さん。彼自身の家族が直面した認知症を持つお父さまの介護体験を基にお話しいただきました。高井さんのお父さまは2000年に認知症を発症し、介護は長年にわたって続きました。外出願望が強く、自宅での見守りに非常に苦労したというエピソードが印象的でした。特に、家族が一瞬目を離した隙にお父さまが外へ出てしまうという事故が発生し、その結果、鉄道事故に巻き込まれてしまいました。

この事故を受けて、高井さんは多くの苦難を経験しましたが、それらは単なる個人の問題ではなく、認知症を抱える家庭が直面する社会的な問題でもあります。事故後、彼の家族はJR東海に対して損害賠償を求める訴訟を起こしましたが、その判決は介護に携わる家族にとって非常に厳しいものでした。名古屋地裁は、家族に監督責任があるとして、高井さんの家族に720万円の支払を命じる判決を下しました。この判決は介護を行う家族にとって非常に危険な前例となるものだったため、直ちに控訴が行われました。

その後の裁判の中で、家族は認知症を持つ方の介護がどれほど困難か、そして社会が認知症をどう理解するかという問いかけを行い続けました。2016年には最高裁で「介護を受ける家族には責任がない」という判断が下され、これにより在宅介護を行う家族の尊厳と権利が守られる道筋がつきました。この判決は、地域で認知症の方が安心して生活できる環境を整えるための礎となっています。

高井さんは、講演の中で認知症ヘルプマークの重要性についても触れました。このマークは、認知症を有する人々が安心して外出し、周囲の理解を得られるようにするためのものです。講演会中には、「見守り・安心キーホルダー」の制作も発表され、地域での支援の形がひとつ広がることが期待されています。

参加者からは、「認知症に対する理解を深めるために、このような講演会は非常に大切だ」という感想が寄せられました。認知症は誰にでも起こり得る病気であり、その理解が進むことで、家族や地域社会が抱える負担を軽減できる可能性があります。参加者の中には、これからもこのような話を多くの人に伝えていくべきだと感じた人も多く、講演会がもたらした影響は大きかったと言えるでしょう。

今後、栗山町や他の地域でこのような活動が続けられ、認知症に対する理解がさらに深まることを期待します。高井隆一さんの勇気ある取り組みを通じ、より良い地域社会の実現に向けて、私たち一人ひとりができることを考え、行動していくことが求められています。