外食業界の人手不足の現状
日本の飲食業界が現在直面している人手不足は深刻なものです。2024年度の飲食業調査によると、調査対象の約25%の企業が新規出店計画を縮小していることが明らかになっています。また、雇用状況を示す有効求人倍率は「飲食物調理」で2.47倍、「接客・給仕」で2.68倍と、全職業平均を大きく上回っており、飲食業界は求職者にとっての求人数が2倍以上の豊潤な市場であると言えます。
これは、主に団塊世代の退職と少子高齢化に起因しており、若年層の労働力の減少や、仕事に対する価値観の変化がこの人手不足を加速させています。このため、企業は「ここで働きたい」と思わせる職場環境を整備することが急務となっています。
体験型研修の重要性
効果的な解決策として注目されているのが、従業員体験(EX)を向上させる体験型研修です。企業は、モチベーションを高め、深い学びに繋がるような研修を推進しています。例えば、くら寿司では、農業や漁業といった現場体験を取り入れた社員研修や、接客と調理技術の頂点を競う「KURA-No. 1 GRAND PRIX」が行われており、これらは全てEXの向上を目的とした取り組みです。
このような研修を通じて社員は実際の体験を通じて企業の理念を再認識し、自らの成長を実感することができます。かつては座学中心であった研修も、今では参加・体験型へと進化し、ディスカッションやフィールドワークを重視する流れが主流となっています。
人材活用のトレンド
採用のトレンドとしては「ジョブ型採用」が浮上しています。これは職務に対するスキルや経験を持った人材を選抜するスタイルであり、優秀な人は「自分がやりたい仕事ができる場所」を重視する傾向があります。また、新卒採用が早期化し、通年での情報発信が求められるようになっています。地域の企業も副業人材の活用を進めており、新しい働き方を模索する中で、リモート勤務を取り入れる動きも広がっています。
くら寿司の具体的な取り組み
くら寿司では研修内容も多様化しており、新入社員向けには「くら塾」、2年目以降の社員向けにはフォロー研修、さらには外国人店長向けの研修も予定されています。2024年には、社員の離職率が最も低かった年でもあり、これもまた彼らの積極的な研修制度が実を結んだ結果です。
また、毎年行われる田植えや稲刈りといった第1次産業の現場体験を通じて、社員は農業や漁業の重要性を学び、企業の社会的責任を再認識します。2025年には、和歌山県で漁業研修が予定されており、海洋資源を守る意識が育まれることを期待されています。
成長を支える「KURA-No. 1 GRAND PRIX」
「KURA-No. 1 GRAND PRIX」は、全店舗から選ばれたスタッフが競い合う社内コンテストです。2025年には世界大会が開催され、アメリカや台湾の店舗からも参加者を募ります。このグランプリは、男性・女性にかかわらず厨房で活躍するスタッフを称えるための素晴らしい機会となっています。
選手たちは実際の業務に基づいたテーマで技術を磨き、仲間との一体感も高まります。これらの活動が念頭に置いているのは、従業員のモチベーション向上とお客様へのより良いサービス提供の両立です。こうした体験を通じて、くら寿司は、企業理念を体現し続ける教育制度を構築しており、今後もますますの発展が期待されます。