日鉄興和不動産株式会社(東京都港区)は、農業事業に新たに参入し、2025年12月12日に「日鉄興和不動産農業株式会社」を設立しました。この新たな展開において、第一弾プロジェクトとして、北海道室蘭市に位置する約5haの遊休地を利用し、2026年4月から高密植栽培という手法を採用してりんごを生産することが発表されました。
この事業の背景には、日本の農業が直面しているさまざまな課題があります。高齢化や就業人口の減少、生産性の低下、さらに気候変動が農業経営に影響を与えているのです。政府は2030年を見据え、法人の農業参入を進め、食料自給率の向上を目指しています。日鉄興和不動産は、不動産業を通じ、地域との信頼関係を築いてきており、その経験を元に新たな農業ビジネスに挑戦することとなりました。
室蘭市は、日鉄興和不動産が長年にわたって培ってきた行政との信頼関係が強い地域です。このため、農業事業の展開がしやすい環境が整っています。気候や土地特性を検討した結果、りんご栽培に適した場所であることが確認され、高密植栽培が採用されることとなりました。この技術では、通常の栽培方法よりも高い収穫が期待でき、効率的な農作業を実現します。
日鉄興和不動産農業株式会社の社長、鈴木誠治氏は、地域課題の解決に向けた取り組みとして、農業事業が重要であると語ります。室蘭市での農業展開により、新たな雇用の創出や耕作放棄地の解消に貢献する意向を示しています。
また、今後の展開として、同社は広域エリアを対象に農地の拡大を目指しており、10年間で100haの生産体制を構築する計画です。生産規模の拡大にとどまらず、流通インフラの整備やブランド化、さらには農地周辺に宿泊施設を設けた観光農園化なども視野に入れています。これにより、地域の活性化に寄与することでしょう。
さらに、構築される農業モデルは、地域との共存を目指した持続可能なモデルであり、住民や関係者の協力を得ながら進められていきます。日鉄興和不動産は、農業事業の成功を通じて、地域の価値創造を目指し、新たな農業ビジネスとしての地位を確立することを期待しています。
取り組みを行う日本農業株式会社も、このプロジェクトにおける重要なパートナーです。高密植栽培に関するノウハウを持つ同社は、日鉄興和不動産と協力して、地域材の生産の質を向上させていく予定です。
日本国内では、農業従事者が減少し、果樹栽培面積も縮小傾向にある中で、持続可能な農業の必要性が高まっています。日鉄興和不動産が手がける室蘭市での高密植栽培によるりんご生産は、こうした背景を受ける新しい試みとして注目されるでしょう。
今後の動向に、多くの期待が寄せられています。地域と共に成長し、持続可能な農業ビジネスを確立したいという日鉄興和不動産の意欲に、地域住民や関係者が協力することで、真の地域発展が実現することを期待したいと思います。