高齢者のオーラルフレイル予防に向けた口腔ケアの重要性とは

近年、高齢者の健康維持に向けた「オーラルフレイル」の概念が注目されています。このオーラルフレイルとは、歯の喪失や食べる・話す機能の衰えなどが重なり合い、口腔機能の低下を引き起こす状態を指します。東京大学の研究チームとサンスターグループが共同で行った最新の研究から、高齢者が日常的に実践できる口腔ケアの習慣がオーラルフレイルの予防に寄与することが明らかになりました。

研究の背景と目的

2024年に発表された「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」によれば、オーラルフレイルは多くの高齢者が抱えるリスクであり、要介護や死亡のリスクを高める要因となります。それだけに、早期の発見と対策が急務となっており、今回の研究はその具体的な指導内容を提案することを目的としています。

調査の方法と対象者

本研究では、2021年に千葉県柏市に在住する65歳以上の健康な高齢者1,439名を対象に、オーラルフレイルの状態を「Oral Frailty Five-item Checklist（OF-5）」に基づいてチェックしました。その上で、日常的な口腔ケア習慣（歯みがきの回数、歯間ブラシの使用頻度、年に1回以上の歯科受診まで）との関連を分析しました。

研究の結果

調査の結果、1日2回以上の歯みがき、週1回以上の歯間ブラシの使用、そして年1回以上の歯科受診が、オーラルフレイルとの関連性を持つことが確認されました。特に、上記の口腔ケアをすべて実施した高齢者は、オーラルフレイルの該当率が最も低いことが明らかになっており、逆に実施項目が少ない場合、該当率が高まることがわかりました。

オーラルフレイルを予防するための具体的なケア法

この研究から、自分の健康を維持するための具体的なアクションが姿を現しました。1日2回の歯みがきは基本ですが、それに加えて週1回の歯間清掃と年1回の歯科専門医の受診を行うことが、オーラルフレイルを予防する鍵となります。これにより、歯周病のリスクが低下し、咀嚼機能も維持できます。

エキスパートの意見

東京大学の飯島勝矢教授は、「今回の研究結果は、誰でも取り組める具体的な口腔ケア習慣がオーラルフレイルの発症を防ぐ可能性があることを示している」とコメントし、高齢者自身によるセルフケアの重要性を説いています。サンスターの歯科衛生士、溝口奈菜さんも「歯間ブラシを使うことが歯周病予防に重要である」と強調し、実践への第一歩を促しています。

まとめ

オーラルフレイルを予防し、健康的な生活を送るためには、日常的な口腔ケアが不可欠です。この研究成果は、健康寿命の延伸に寄与するものであり、地域社会での啓発活動が今後一層重要になるでしょう。高齢者自身が積極的に取り組めるケアを促進し、安心して食べ、笑うことができる社会の実現を目指すために、私たちも意識を向けていきたいものです。