岡山大学と札幌医科大学の共同研究によるがん免疫応答検出技術
2025年8月6日、岡山大学は札幌医科大学との共同研究において、がん細胞に対する免疫細胞の初期応答(狼煙)を検出し、免疫チェックポイント阻害剤の有効性を早期に判定する技術を発表しました。これは、自己抗体バイオマーカーを利用した新たなアプローチとなります。
研究の背景
がんは現在も多くの人々にとって悩ましい病であり、その治療法の開発は急務です。特に、非小細胞肺がんのように治療が難航するタイプにおいて、治療がどの段階で効果を発揮するかを見極めることは非常に重要です。これまでには、効果の見極めが遅れることが、患者にとって大きな負担となっていました。
新技術の概要
この研究では、化学放射線療法を受けた後に免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体)を投与する免疫地固め療法の効果を、初回投与からわずか2週間後に判定できることが確認されました。これにより、治療の開始時点での判断が可能となり、患者にとっての治療選択肢の拡充に寄与することが期待されます。
自己抗体の定量システム
特に注目すべきは、岡山大学が進めている自己抗体の網羅的定量システム(MUSCAT-assay)です。この技術を用いることで、抗PD-L1抗体の投与前後における血清中の自己抗体群を詳細に評価することが可能となります。今回の研究では、この技術を用いた際に、自己抗体群に明らかな変化が見られた症例が良好な予後を示すことが確認されました。
医療現場へのインパクト
がん免疫治療における効果の個人差は、これまで医療現場での大きな課題とされてきました。今回の研究成果により、患者一人ひとりに最適な治療法の選択が可能になり、より効果的な治療が期待できるようになります。この技術は今後、多様な臨床検体に対しても応用され、さらなる検証が進められる予定です。
研究者のコメント
研究を担当した二見淳一郎教授と大学院生の森壮流は、微量の血液で自己抗体を網羅的に測定できる技術の実用化を進め、医療現場での免疫モニタリングに役立てる可能性を秘めた手応えを得たと述べています。今後も様々な臨床研究を通じて、この技術の有用性を調査し続けていく考えです。
結論
この岡山大学と札幌医科大学の共同研究は、がん免疫治療における新たな道を開く画期的な成果です。研究成果は、学術誌「Scientific Reports」にも掲載されており、今後の展開が非常に楽しみです。今後の研究が、がん治療の個別化に向けて大きな影響を与えることを期待しています。